あなたがいれば〜第四章〜

「あなたのことが……」
「あっ、そーいえば、アナタ、僕とお会いしたことありますよね?」
「え………えっ!?」
「僕、赤羽駅でストリートライブやってるんですよね。アナタ、見てませんでしたか?」

……赤羽駅でのストリートライブ。
確かに見たことがあった。
水兵帽をかぶり、ボーダーTシャツに首にバンダナを巻いた男がギターを抱え、ボサノヴァを唄っていた。
ムードがあって良かったのだが、歌詞が単調だった。同じ言葉の繰り返しだったのだ。
確かアントニオとかトゥーサとか…。
歌詞に発展がないので、見物客はどんどん離れていった。埴輪子もギターケースに100円入れて立ち去った。

彼があの時のシンガーだったとは…。

「アントニオへの思いがある日ムワーッと熱くなってきて、そのままギターを持って駅に出て唄にしたんです。とにかく、歌詞は『アントニオ』と『土佐犬』しか頭に浮かばなくて。無我夢中でその二言でボサノヴァを唄ったんです。」
「えっ、土佐犬なんて唄っていた?」
ボサノヴァだから、なんとなくトゥーサ…ケンとか唄っていたかもナァ。」
「……。」
「あの時、お金入れてくれたよね?この人も土佐犬が好きなのかなぁ?って嬉しかったんだ。」
「……。」
「あの時はありがとう。」
「うん……。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イヴはいいともクリスマスSPを見ながらひたすら飯島愛Google検索していました。合掌……。