牙とナイフ〜第一章〜

アントニオ〜〜
トゥーサケ〜ン……
トゥーサ、トゥーサ、トゥーサ、ケ〜ン

ラ〜ヴ……アントニオ〜〜
トゥーサ、トゥーサ……。


なんなんだ、このメロディは。

オレは階下から聞こえるギターの音色と下手くそな唄で目が覚めた。
昨日はシャチョウに色々連れ回されて、疲れてるんだっつーの。
働き者のオレ様をこんなクソメロディーで起こしやがって。

駅前徒歩0分のアパートだが、夜の騒がしさなんてこの土地じゃぁ、たかが知れてる。
こんな赤羽の駅前で路上ライブするやつなんて、どんなヤツなんだ?
窓を開けて見ると、ボーダーTシャツの男が体をくねらせて唄っていた。
なんなんだ?
気持ち悪い野郎だなぁ。

部屋に転がっていたビールの空き缶を、ヤツをめがけて放り投げた。
スコーン。
空き缶はヤツには当たらず、路上に転がっていった。
ちきしょう……。

ティルルル〜ン、ル〜、ル〜ン。
携帯が鳴った。

「もしもし、おはよう。もう起きていたか。」
シャチョウだ。
気持ち悪い野郎の唄といい、シャチョウのふてぶてしい声といい、今日は最悪な目覚めだ。
「あぁ、昨日渡されたエロチラシですか?これからポスティングしますよ。」
オレの仕事は表向きは印刷業だ。風俗チラシやAVパッケージを印刷したり、たまには配送だけでなくポスティングもやっている。
「いや、それは後でいい。それより先に仕事が入ったんだ。先にそれをやって欲しい。」
「本業っスね。今回は何スか?」
「簡単に済みそうな仕事だよ。」

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
去年の紅白は森進一さんの“おふくろさん、大熱唱”以上に、サブちゃんの口パクに衝撃を受けました。
サブちゃんはちゃんと地声で唄うのは、一年間でたった紅白の一回だけ!と聞いていたので、とうとう紅白すらも唄えなくなったのか……と、切なくなってしまった大みそかでした。